中国商務部が発表した最新のデータによると、2024年の中国のサービス貿易総額は7.5兆人民元(約1.03兆ドル)に達し、前年同期比14.4%増となった。これにより、サービス貿易規模は過去最高を更新し、初めて1兆ドルの大台を突破した。サービス輸出は18.2%増、サービス輸入は11.8%増と、それぞれ堅調な伸びを示した。
◆ デジタル化・グリーン化が牽引、競争力が向上
中国商務部国際貿易経済合作研究院(CAITEC)の李俊・サービス貿易研究所所長は、「2024年は、世界的なデジタル化・スマート化・グリーン化の波が進み、中国のサービス貿易も拡大を続け、構造の最適化が進んだ。国際競争力も着実に向上し、さらなる成長の可能性を示している」と評価した。
◆「China Travel」ブームが観光業を牽引
李氏は、2023年に中国政府が**過境免签政策(トランジットビザ免除政策)**を大幅に緩和・最適化したことが、国際的な関心と支持を集めたと指摘。「China Travel」のキーワードはSNSで世界的にトレンドとなり、中国観光が新たなブームを巻き起こしている。
「故宮(紫禁城)、万里の長城、兵馬俑、張家界、九寨溝、黄山といった定番観光地から、街を歩いて楽しむ“Citywalk”の流行まで、中国各地を訪れる国際観光客が急増している」と述べ、「中国文化が持つ独特の東洋の魅力が世界中で人気を集め、中国観光業の爆発的な成長がサービス貿易のさらなる拡大を後押しする可能性が高い」と展望した。
◆ デジタル文化コンテンツが海外市場で好調
さらに、ゲーム・映像・オンライン文学など、中国のデジタル文化コンテンツが海外市場で好調な成長を遂げていることも、サービス貿易拡大の大きな要因となっている。
2024年に発売されたアクションRPG「黒神話:悟空」は、発売直後からSteamやWeGameといった主要ゲームプラットフォームで売上ランキングのトップに立ち、複数の業界賞を受賞する快挙を達成した。また、中国の映画・ドラマ作品も、Netflix(ネットフリックス)、Disney+(ディズニープラス)、YouTubeなどを通じて海外市場に進出し、注目を集めている。
中国のオンライン文学市場も急速に拡大しており、2023年のデータによると海外向けの中国ネット小説作品は約62万作品、海外ユーザー数は2.3億人を突破。これは中国の文化輸出の新たな潮流となりつつある。
◆ 政策支援で高品質なサービス貿易の実現へ
2024年8月、中国政府は**「高レベル開放によるサービス貿易の高品質な発展を推進するための意見」**を発表。これにより、中国のサービス貿易が次の成長段階へ進むための政策基盤が整備された。
李氏は、「高水準の開放、革新駆動、国際協力の深化」という3つの柱が、今後のサービス貿易成長の重要な戦略になると指摘する。
- 開放の推進
- 2024年、中国は初めて全国規模で「クロスボーダーサービス貿易のネガティブリスト」を導入。自由貿易試験区(FTZ)版と全国版の2種類を策定し、さらなる開放を目指している。
- 今後は「リストの縮小・簡素化」を進め、規制を段階的に緩和し、国際貿易ルールとの整合性を高めていく。
- イノベーションの推進
- 産業のデジタル化やグリーンサービスの活用を促進。特に、金融、コンサルティング、デザイン、認証・評価といった専門サービスの国際競争力を強化することが求められている。
- 「保税+サービス貿易」の新たな規制モデルを導入し、製造業との連携を強化することで、モノの貿易とサービス貿易を融合させる戦略が進められている。
- 国際協力の深化
- 服貿会(中国国際サービス貿易交易会)などの国際展示会を活用し、海外企業との協力を強化。
- 国際的なサービス貿易協力区を整備し、ビジネス環境の最適化を図る。
◆ おわりに:新たな成長のチャンス
2024年、中国のサービス貿易は初めて1兆ドルの壁を突破し、世界市場での存在感を一層高めた。観光、デジタルコンテンツ、専門サービスなど、多様な分野での成長が今後も期待される。
「サービス貿易は、中国経済の新たな成長エンジンになりつつある」と李氏は述べ、「開放、革新、協力を強化しながら、持続可能な発展を実現することが、中国の未来にとって重要な鍵となる」と強調した。